東京大都市圏における人口学的変化mapRaster2 分析・表示例

小方 登(京都大学 人間・環境学研究科)


ここでは,東京神大都市圏を例として,1980年および2000年の国勢調査のデータを用いて,人口を指標とした大都市の空間生態を説明します。

人口分布の空間データとして,ここでは国勢調査地域メッシュ統計(3次メッシュ:1kmメッシュ)を用いています。図で示した区域に含まれる人口の合計は,1980年時点で約2480万人,2000年時点で約2900万人です。この区域には農村部も幾分か含まれますが,この数値が東京大都市圏のおおよその人口規模を表しています。

2000年までの20年間における変化の特徴として,大都市圏全体としての人口の少子・高齢化と人口分布における郊外化が指摘できます。対象区域の若年人口率(15歳未満人口の総人口に占める割合)は,1980年における23.66%から,2000年の13.22%へと急減しました。そのほか,東京湾岸の埋め立て地(江戸川区や浦安市)に開発された集合住宅群などにおいて,人口増加率が高いことや2000年時点においても若年人口率が高いことが示され,少子化時代の都市空間生態の一端を示しています。

図示に際しては,地理的背景がわかりやすいようにJR主要路線を重ねて表示しています。このような線フィーチャーを表示する機能はmapRaster2には含まれないので,別途作図したものを重ね合わせて表示しています。


  地形と土地利用
対象とする東京大都市圏の概観を示すため,地形の陰影図の上に,土地利用を色分けでドレープして作図した。国土地理院数値地図(50mメッシュ標高)を編集して100mメッシュの標高データとし,これに国土数値情報「土地利用」の100mメッシュデータをドレープしている。東京の市街地が,西から延びる武蔵野台地と,荒川などが形成する東京低地の両方にまたがる形で展開していることがわかる。

 

1980年における東京大都市圏の人口分布。3次メッシュの面積はおおよそ1平方キロメートルであり,メッシュごとの人口を図化すれば人口密度の分布図となる。都心を取り囲む旧市街地に人口密度の高い地帯が環状に存在し,郊外へ向かって徐々に密度が低下するパターンが読み取れる。

 

2000年における東京大都市圏の人口分布。1980年時点における旧市街の人口過密が緩和され,郊外への人口分散が読み取れる。


 

人口変化率(1980 − 2000年)

上の2時点(1980年と2000年)間の人口変化率。都心を含む旧市街地において人口が減少ないし停滞し,郊外において人口増加がみられる。また,距離的には都心に近いが新しく開発された東京湾岸の住宅地で非常に高い人口増加を示している。

 

1980年時点における若年人口率(15歳未満人口の総人口に占める割合)のパターン。旧市街地で低く,郊外で高いのは,成長する都市(圏)にみられる一般的な傾向である。

 

2000年時点における若年人口率。バブル崩壊による経済の低迷と,少子化の影響を受け,大都市圏全域で若年人口率は大きく低下した。東京湾岸など,一部の新しく開発された住宅地で,局地的な数値の突出がみられる。


 

小売商店の分布(2002年)

小売商店の分布(データは2002年商業統計による商店数)。商店の分布が人口分布に影響されるのは当然だが,必ずしも一致するわけではない。商店は集まって商業集積地を形成するのが普通であり,また商業集積地は商圏を分割するために一定の間隔をおいて成立する傾向がある。図では,東京の古くからの盛り場である銀座・日本橋のほか,山手線沿いに池袋・新宿・渋谷の副都心が商業集積地となっている。さらにその外側には,鉄道線に沿って川崎・吉祥寺・大宮・船橋などが立地する。このような商業集積地の立地における規則性については,地理学の中心地論として研究されている。